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Vetro -3-
斑過去第3話です。妄想さーせん。じのきめぇ。
過去のはこっちに移してきたりしてます。うふ。
 
 

 ++++++++++++++++++
 
 夢を見ていた。
 なぜそれが夢だと分かるのかといえば、
 もう何回も何回も。
 見飽きて感慨など沸かない程、繰り返し見た夢だから。

 小さな一戸建ての白い家がある。そして、小さな庭。
 そこに、穏やかな笑顔を浮かべた女の人がいる。
 足元には小さな女の子がスコップを持って地面を掘っている。
 少し離れたところには、質のいい服を着た男が二人を眺めている。
 靄が掛かった世界にいる、幸せな三人の家族。

 夢を見ていた。
 なぜそれが夢だと分かるのかといえば、
 もう何年も何年も。
 昔過ぎて覚えていられない程、昔に失った真実だから。


「…!」
斑は病室の扉が開く音に、ベッドから飛び起きて思わず身構えていた。
あの男が朝の巡回以外でこの部屋に来る筈が無い。だったら誰が。
まだ起きていない脳内で思考を巡らせて、行き着いた答えは
「…看護士の、人?」
部屋に入ってきた男は斑の言葉に一瞬きょとんと首をかしげ、
やがて人のよさそうな笑顔を浮かべて見せた。
頭の回転の遅そうな、愚鈍な男。
奇しくも父親と同じ意見を持ったことを彼女は知らない。
大津は斑を覗き込むように頭を下げると、
「はい。如月院長に頼まれてきました、大津和明といいます。よろしく。」
低い声でそう語った。
「よろし、くお願い、します。」
早鐘のように打つ心臓が煩い。
最後にあの男以外の人間に会ったのは、どのくらい前だっただろう。
前の世話役が消し炭になってから、どのくらい経ったんだろう。
斑の微妙な表情の変化には気づかないのか、和明は無遠慮にベッド脇に腰掛けると、
持っていた書類をテーブルに置いて眼鏡をはずした。
「斑ちゃん、だったよね。」
警戒心と恐怖。
久々に感じた人間らしい感情に、斑は完璧に我を失っていた。
腕が熱い、焼けるようだ。
お母さんが死んだ時と同じ。炎が視界を支配する。
「、ちゃん?」
誰かが自分に話しかけている。
斑は必死に意識をこちら側に保とうと、青白く変色した唇を噛み締めた。
蒼白の顔と空ろな眼差し。うっすらと浮かんだ脂汗に大津の表情が変わる。
「斑ちゃん」
どこか言い聞かせるような声色の変化にも、斑はもう何も感じなかった。
火の支配は彼女の思考を奪う。
あの時と同じ、醜い炎の鳥が。化け物が。

「落ち着きなさい」

それは冷たい声だった。
大津の無骨な掌が、自分の手をつかんでいる。
その所為か、少なくとも焼けるような痛みは幾分、治まっていた。
「あ、の」
「落ち着けばそれは暴走しない。」
「…これ」
「説明は長くなるから、あとでにしよう。
ただ、君は不安定だから力の暴走がしやすくなってる。
それだけだから、安心して。落ち着けば、収まるから。」
――そうすれば誰のことも傷つけずに済むから。
大津はさらに力を込めて斑の手を握り締めると、
変わらない人のよさそうな笑顔で斑を覗き込んだ。

「大丈夫」

大津の言葉には不思議な安心感があった。
体の力が一瞬で抜けて、そのまま意識まで奪われる。
遠のいていく視界の端で、看護師と名乗った知らない男が穏やかに笑う。
――愚鈍な人じゃない、優しい人だ。
斑はそう印象を改めて、そのまま意識を手放した。

 
 夢を見ていた。
 何度も、何度も記憶の端に踊る夢を。
 炎が母さんを食う夢を。
 それを私が見る夢を。
 父さんが黒い塊に縋ってなく夢を。
 そして家族が消えた夢を。
 もうずっと、夢を見ていた。

 あの人が来るまでは。


(続)
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