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Vetro -2-
斑過去第2話です。
こっそり書いて付けたし。
 
 

++++++++++++++++++++++++++++++++

さて。君は知っているかい?

(語り部はオセロのコマを指先で幾つも遊ばせながら、
どこか人を食ったような笑みを浮かべ、貴方を覗き込んだ。)

愚と賢、鈍と鋭は常に反面に位置している。このオセロの様にね。
だけど、見せている面が、白でも、真実が白とは限らないし、
見せている面が黒だからといって、後ろが白だと決め付けることも出来ない。

(語り部の手から零れ落ちたオセロが、赤いじゅうたんに零れる。
拾い上げてみれば、それは両方が白の、妙な石になっていた。)

彼の計算違いは此処だね。
彼は、表も黒なら裏も黒だと決め付けた。
そして、安心したんだ。

そこで、歯車は大きく狂い始める。


    *          *          *

 
恵が大津に対して最初に持った印象は、純朴と愚鈍だった。

遅れた4分45秒をなんとか帳尻合わせ、待合室に向かった恵を出迎えた男。
伸ばしっぱなしの黒髪に、太い黒縁の眼鏡。顔立ちはそう悪くないのだろうが、
全身に纏う独特な雰囲気がそれを霞ませている。
それは恵の嫌う、研究者と言う部類の人間が纏う空気によく似ていた。
恵は大津に気づかれない程度顔をしかめ、それでも営業用の笑顔を貼り付け手を差し出す。
「やあ、君が大津君かい。私が、君を指名させてもらった如月恵だ。」
「あ、初めまして。大津和明と言います。」
恵の手を握り返しながら、大津はへら、と情けない笑みを浮かべる。
「ええと、斑のことは聞いているかな。」
「あ、はい。さっき案内してくれた人に、大まかなことは。」
「そうか。じゃあ安心だ。」
「娘さんがご病気で、お気の毒です。私に出来ることは何でもしますんで。」
「ああ、家内も生前は斑のことを気に病んでいたからね。僕としても治してやりたい。」
そう言い募った恵は、半分口を開いて自分を見上げる大津を一瞥すると
さりげなく腕時計を掲げ、困ったような笑みを浮かべながら切り出した。
「僕も一緒に行きたいのは山々だが、生憎これからはずせない会合がある。」
「はあ」
「君、斑のところに行ってくれるかい?初日だし、色々話してあげて欲しいんだ。」
「あ、はい。勿論です。」
恵の言葉に大津は慌てて立ち上がり、その拍子にひざに乗せていた書類を落とす。
おろおろとそれを拾い集める大柄な背中を一瞥して、恵は僅かに口元を歪める。
「悪いね。」
恵の唇に確かに浮かんだ侮蔑の笑み。
大津は気づかずにあせくせと散らばった髪をかき集めている。
これなら安心だ、と恵の中に潜む油断が囁いた。
これなら安心だ、何もばれないし何も、変わらない。
「それじゃあ、私はこれで。」
恵はそのまま踵を返し、大津を残し足早に待合室から去っていった。



(続)
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